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――前作『Green Days』から約3年ぶりのアルバム・リリースとなりました。
先ず、この3年間の中村さんについて教えていただけますか?

子育てと両立して、報道番組やイベントの音楽制作をさせていただきました。
締め切り目前に体調を崩してしまい、作業が思うように進まないまま締め切りが迫り、苦しかったこともありまして、思うのは“健康は宝”。これに尽きます。



――『Green Days』は、「Precious Days」をはじめとするTV番組のテーマ・ソング、長野オリンピック表彰式テーマ・ソングなど、タイアップ曲を多く収録していて、耳馴染みのある楽曲を一挙に楽しめる作品になっていたと思うのですが、今作『大地と水の記憶』は「母のうた」(*1) を除く全ての楽曲が新曲ということで、ファン待望のアルバムではないでしょうか。

ありがとうございます。制作にたくさんの時間をかけることができなかったので、短期間に集中して作曲しました。今回は特にオーケストラで録音することができるということで、とても幸せでした。



――テーマ・ソングやサウンドトラックなど、特定のシチュエーションに寄せて作曲をする場合と、ご自身でテーマから生み出していくというのでは、どのように違いますか?

刑事ドラマの劇伴などでは、時にミステリアスな曲やドロドロとした世界観を求められることがあります。これらは、私の表現したい音楽とは異なりますが、こういった曲を作るのも楽しい作業なのです。ぬり絵に色を塗っていくようなイメージですね。
一方、ドキュメンタリー番組の為の作曲は、私自身が表現したい世界観と重なる面も多く、のめり込んで作業しますのでオリジナル・アルバムに向かう姿勢と大差が無いように感じています。



――今作は、2006年発表の『光と水の旋律』に続くオーケストラ・アルバム第2弾とのことですが、この構想はいつ頃からお持ちだったのですか?

いつも「聴いてくださる方の心の中の情景に寄り添う音楽を作りたい」と思っている私にとって、オーケストラで音楽を表現することは一番理想的な形だと思っています。映画音楽やドラマの様々なシーンでオーケストラのサウンドが流れるように、感情移入しやすい耳ざわりなのではないかと思うのです。
一人一人が違う一日一日を積み重ねて、それぞれに出逢いがありドラマがある。ストーリーがある。想い出がある。オーケストラで録音したこの2枚のアルバムは聴いてくださる方、一人一人の物語の“サウンドトラック”になったらいいなと願っています。



――ご自身の作曲においてオーケストラの存在とはどのようなものなのでしょうか?

憧れです♪ 自分のイメージを奏でてくださるオーケストラの方々を尊敬しています。



――『光と水の旋律』と『大地と水の記憶』、いずれも“水”がキーワードになっていますが、何か共通する思いがあるのでしょうか?

そうですね。“水”こそ生命の源。全ての生命は、この“水”によって生かされていると言っても過言ではありませんよね。乾きを癒してくれる“水”は、母の存在のイメージにも繋がっています。地球を地球たらしめているのは、“水”の存在。自然や生命の営み見つめると、そこに必ず“水”の存在が見えてきます。
そういった意味では、私が作曲をする時にはいつも、この“水”のイメージが根底にあるのかもしれません。



――では、逆に『光と水の旋律』を経て、『大地と水の記憶』の制作において意識した点や異なるテーマがあれば教えてください。

基本的には、「聴いてくださる方の心の中の情景に寄り添う音楽をオーケストラで録音したい」ということは共通しているのですが、今回一つ心がけたことがあります。それは、“なるべく明るい曲を多くすること”でした。温かみがあって、ほんの少しでも前向きな気持ちになれるような曲を書いて、アルバムにしたいと思いました。



――優しくもスケール感のある世界観が中村さんの音楽の魅力だと思います。日常的にどんな音が中村さんの頭の中で鳴っているのか、どんなことにインスパイアされてらっしゃるのか非常に興味深いのですが、そういった世界観や音を普段の生活から意識されているのでしょうか?

“スケール感がある”と言っていただけると、なんだか嬉しいですね(笑)
子供の頃から「宇宙が大好き。地球はもっと大好き」と、広い空に思いを馳せて色々と空想をしてきたので、そんな“広がり”が“自分らしさ”になっていたら、素直に嬉しく思います。
普段はほとんどの時間と労力を子育てに費やしていますから、ぼんやりと空を眺める一人の時間もありません。けれど、“子育て”という小さな生命の不思議に触れて笑ったり、泣いたりする経験をすることで空想から現実的に、より力強く地球の存在のありがたさ感じられている気がします。



――9歳でエレクトーンを始められ、17歳から作曲をはじめられたのですよね。幼少期に音楽に触れてから、作曲家を志すまでとはどのような感じだったのでしょうか?

20歳で演奏家としてデビューしましたが、コンプレックスがあって、なかなか後ろ向きな自分を変えられなかったのです。周囲は3、4歳からピアノを習っている人ばかり…。私はというと、指は動かないし、音程も聴き取れない。他人(ひと)の2倍、3倍…それ以上の練習をしても限界を感じていました。
でも、作曲には妙な自信があって―――。それは「嘘、偽りのない私の想いをメロディに託しているんだから」という思いからでした。23歳くらいでしたか、その思いに気付き、腹をくくった感じでした。「作曲は嘘、偽りのない自分の表現。これでダメなら音楽やめよう」って。
今でも嘘、偽りなく作曲と向き合いますが、自分の力が凄いとは全く思いませんし、スタジオでも恥をかいてばかりです。でも、仕事として続けさせてもらっていることは、周囲の力だと感謝しています。



――作曲は始められた頃から、インストゥルメンタルの楽曲を手掛けてらっしゃったのですか?

はい、そうです。



――歌詞や絵、写真などを用いずにメロディで情景や様々な思いを表現するのは、とても大変ことのように感じるのですが、中村さんにとってその醍醐味とは、どういったことでしょうか?

曖昧なところが音楽の良いところですね。私が空をイメージしてメロディを書いても、聴いた方が海をイメージしてくださることもある。とても面白いなと思います。



――今作『大地と水の記憶』について、もう少しお聞かせください。
ジャケット・デザインですが、限定盤と通常盤を横に並べると1枚の絵になるということで、大変印象的なものになっていますね。まさに、記憶のピース(=楽曲 / 絵)を繋ぎ合わせていくことで、ひとつの心(=アルバム / アートワーク)が構成されているように感じます。5曲目に収録されている「One Heart」は、そんなイメージを集約したような壮大なアレンジとなっていますが、何か制作意図やイメージ、思い入れなどがあれば教えてください。

「One Heart」は、これまでも共通のイメージで曲を書いたことがあるのですが、端的にお話させていただくと、「世界がひとつになれたらいいね」というテーマの曲です。歴史も文化も言葉も習慣も、国が違っても、誰かを大切に思う気持ちや子供達の幸せを願う心は、みんな同じなんだから。ひとつになれたらいい―――そんな願いを込めています。



――「One Heart」に代表される、美しく壮大なオーケストレーションを用いた楽曲群の中で、アンビエントな雰囲気の「IZUMI」には最初は少し意外性を感じたのですが、せせらぎに耳を澄ますような不思議な心地良さがありますね。

こういうスタイルも好きなんです。メロディで歌い上げるのではなく、シンセの持つ深い響きで時空を表現をするようなスタイルですね。何かを考えている時って、目まぐるしく言葉が頭の中を走り廻るのですが、こういうスタイルの曲を聴くと頭から言葉が消えてくれるので、好きなんです。



――ピアノと二胡の音色による、素朴でありながら抒情的な雰囲気が魅力の「ノスタルジア」も、とても印象強いですね。

二胡奏者の賈鵬芳(ジャー・パンファン)さんは、本当に温かくて大らかで素晴らしい、立派な演奏家なので、賈さんが自分の曲を奏でてくださることが本当に嬉しく、幸せでした。「足を引っ張らないように」と、必死でピアノを弾きました。



――今後の音楽活動について、何か目標や挑戦してみたいことなどあれば教えてください。

うんと先でいいので―― オーケストラの傍にピアノを置いて、コンサートをしたいです。



――では、最後にインタビューをご覧になっている皆さんにメッセージをお願いします。

味を持ってくださって、ありがとうございます。音楽は時間の経過とともに存在するものですから、もし私の音楽を聴いてくださったとしたら、あなたは私の音楽とともに時を過ごしてくださったということになります。
感謝を忘れず、これからも真っ直ぐに心の中に聴こえてくるメロディに耳を澄ませて、作曲していきたいと思います。

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*1 … 2012年5月発表『Green Cafe』にピアノ・ソロVer.を収録している

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大地と水の記憶

          L) デジパック仕様限定盤 IC-201201 ¥2,300(tax in)
          R) 通常盤 HUCD-10121 ¥2,200(tax in)

1. Hundred Years (Theme Song)
2. 母のうた
3. 4月25日に
4. In the Kitchen
5. One Heart
6. Room 107
7. IZUMI
8. ノスタルジア
9. Always With You (どんな小さなことでも)
10. そんな時 深呼吸
11. Looking Up <Bonus Track> ※限定盤にのみ収録

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